ごあいさつ

第94回日本整形外科学会学術総会を終えてー皆様に感謝,感謝

金沢大学整形外科 教授
土屋 弘行 Hiroyuki TSUCHIYA

本年5月20日より21日までの2日間にわたる第94回日本整形外科学会学術総会の現地開催,6月10日より7月12日まで,全てのプログラムのオンデマンド配信を無事終了いたしました.学術総会を成功裡に終えることができ,同門および教室の先生方に深く,深く感謝申し上げます.武漢発新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けて,短期間で学会の開催形式が度々変更になる中,金沢大学整形外科学教室が,充実した,未来へつながる学会を開催できたことを誇りに思います.

2018年5月23日,神戸市におきまして第94回日本整形外科学会学術総会の会長選挙が行われました.多くの代議員の先生方の支持を得まして,金沢大学整形外科学教室を代表して私が会長に選出され,全ては此処から始まりました.学術総会を始めとする日本整形外科関連の3学会の準備は3年前から始まります.まずは,学会のアウトラインを決め,会長の意に沿う学会運営を担っていただける運営事務を担当する会社の選定が重要となります.今回は,2017年に国際患肢温存学会(ISOLS)も担当していただいた(株)コングレ様に運営事務をお願いしました.その後には,予算案の作成が待っています.整形外科領域における最大の学会であり,予算は莫大です.

予算の決定には,まず学会の開催形式を確定する必要があります.第93回学術総会は完全なWEB開催となりました.いつでも好きな時間帯に,好きな場所で,繰り返し視聴が可能など,このオンデマンド配信の利便性を体感しますと,この方式は是非とも取り入れるべきである判断しました.熟考した末,通常の現地開催(ライブ配信は無し)とその後のオンデマンド配信を行うというハイブリッド形式を目指すことにしました.予想される現地参加者数は6000人,オンデマンド配信ではさらに6000人,合計12000人の参加を見込みました.東京国際フォーラムでの開催は既に決まっていましたが,プログラムの構成上会場が不足することが判明し,後に,JPタワー・ホール&カンファレンスを追加で借りることにしました.

ここからは,学会のメインの部分であるプログラムの立案です.この伝統ある学術総会の今回のメインテーマは「伝統と創造」,サブテーマは「夢・挑戦・実現」としました.本学会のハイライトとして,メインテーマに沿った「伝統と創造シンポジウム」をさまざまな領域で設定し,伝統を築き上げてこられたオーソリティの先生方による講演と新進気鋭の先生方の発表,そしてそれに引き続く総合討論を通じて,先人の足跡を辿り,現状を見つめ,未来につながるシンポジウムとしました.整形外科の基礎研究や診断および治療法がこれからも発展していくためには,夢を描き,それに向かって挑戦を続けていくことが重要です.是非とも本学会を,参加者皆様の夢への挑戦と,それを実現するための一助となるものにしたいと考えました.

主要プログラムでは,特別講演を2演題,海外演者および国内演者による招待講演を27セッション,教育研修講演を71セッション,シンポジウムを69セッション予定いたしました.一般演題につきましては,2358題の応募をいただき,合計1610題を採用させていただきました.演題採択率は68.3%となりました.特別講演では,作家の百田尚樹氏に「日本人の誇り」,衆議院議員稲田朋美先生に「伝統と創造」と題したご講演を予定しました.外国人招待演者は45名に上りました.

学会のメインテーマに合わせた14の「伝統と創造」シンポジウムのほか, JOA/AAOS combined symposium では,“Recent Advances in Orthopedic Oncology”と題して,骨軟部腫瘍領域における日米の最先端の治療と今後についての発表があり,各種ガイドラインに関するシンポジウム,医療保険,AI/VR/MRに関するシンポジウムも企画しました.コロナ禍での医療の変化に対応するため,新型コロナウイルス感染症に関するシンポジウムを企画しました.その他にも,骨折の治療,大規模災害に関するシンポジウム,小児に特化した検診や骨折のシンポジウム,女性医師,若手医師に関するシンポジウムをそれぞれ企画しました.また,医療安全,交通事故における諸問題に関するシンポジウムも企画し,大学,一般病院,開業医を問わず幅広い整形外科医に興味を持ってもらえるよう配慮いたしました.さらに,がん,がん骨転移の治療などについて,広く体系的に学んでいただけるよう特別集中講演を設けました.実践的な知識を深めると同時に幅広い単位取得ができるように配慮いたしました.これらのプログラムは,山本特任教授を中心に,各研究グループが知恵を絞りに絞って考えぬかれたものです.

スポンサードセミナーは,加畑准教授が担当し,この困難な時期に予想以上に多くの応募がありました.最終的には49セミナーが行われ,いろいろな分野で充実した内容になったと思います.加畑准教授には,重要な企業展示も担当してもらいました.東京国際フォーラムの地下会場が満杯になるほどの応募がありました.コロナ関連,人工知能関連の企業展示も計画しました.

また,出村准教授は,開会式,閉会式,金沢おもてなし行事,そして財務を担当してくれました.八幡リハビリテーション部長は,金沢大学整形外科の歴史を紹介するビデオおよび展示用パネルを担当しました.林医局長は,海外招待者の対応とツアーの計画,松原講師はコングレスバッグや表彰状を担当しました.教室の先生全員がそれぞれに役割を分担し,各自がその場その場で,大いに力を発揮してくれました.本誌の「学会を終えて」の特集をご覧いただければ,その苦労話なども詳しく書かれているかと思います.

さて,学会準備も順調に進み,現地での通常開催とその後のオンデマンド配信というハイブリッド開催で日本整形外科学会の学術集会運営委員会や理事会での承認を得ており,あとは5月の開催を待つばかりというとき,プログラミングで多忙な時間を費やしながら,コロナの状況を注視していますと,なんと第一波,第二波よりも大きな波が来ているではないですか!年末から年始にかけてはコロナの第三波,学会が近づくに連れコロナの第四波が東京地方を襲います.コロナ陽性患者数はどんどん増加していきました.これまでの経験が何の役にも立たない状況で,日本整形外科学会もその対応に苦慮し,日本整形外科学会執行部と学会長,かつ学術集会運営委員会での討議により,何回かの開催形式の変更を余儀なくされました.早々に一般口演とポスターはオンデマンド配信のみとし,最終的には,東京が緊急事態宣言下であり,現地開催規模を最大限に縮小し,かつ,徹底した感染対策下でのハイブリッド開催としました.5月20−21日の二日間にわたり現地開催,学術総会終了後の一定期間(約1カ月程度),インターネットを利用したオンデマンド視聴ができるWeb開催を行うこととしました.規模の縮小はあるものの,学術総会として新たな開催形態である「ハイブリッド開催」の成功に向けて発進しました.

既に,学会参加事前登録者数は4000人になっていましたが,緊急事態宣言下では,この2日間に講演やシンポジウムに関係する演者と座長のみの現地参加を許可することにしました.教室からも全員参加の予定でしたが,約半数の現地参加となりました.既にワクチンの接種が終了していることが救いでした.

実際の学会において,開会式では,炎太鼓の後,教室紹介ビデオ,国歌斉唱,学会長挨拶,理事長挨拶と続きました.待ちに待った学会の開会で,緊張の中にも,背筋がピンとなり清々しい気持ちにもなりました.その直後の,会長講演では,私のこれまでの研究,“夢・挑戦・実現”の軌跡を熱く語らせていただきました.若い医師たちへの起爆剤となれば幸いです.

引き続き行われた特別講演1の百田尚樹氏の「日本人の誇り」は圧巻で,大きな感動を覚えました.日本人が誇りにすべきことは山ほどある,それを忘れてはならないという強いメッセージが発せられました.翌日に行われました特別講演2の稲田朋美先生の「伝統と創造」では,日本の現状と課題が語られ,今後日本を更に良くするために何が必要かを教えていただきました.この後,閉会式が行われました.最優秀ポスター賞の発表の後,学会長,新理事長,次期会長の挨拶と続きました.学会長メダルを次期会長にお渡しし,来年の学会の盛会を祈念いたしました.

これらの模様は,オンデマンド配信で,先生方も視聴されたことと思います.また,過去最大規模に近い企業展示の予定でしたが,出展者数は約30%となりました.逆に密を十分避けることとなり,結果的にはプラスに作用したと思います.展示会場でサーブされた石川県の地酒とおつまみのセットは大変好評を博し,参加人数の5倍のセットが出ていました.さすが整形外科医で,酒好きが多いと実感しました.

スポーツ大会は幻に終わりましたが,野球のディフェンディングチャンピオンである金沢大学は,野球,サッカー,バスケットの全てに気合を入れて準備していました.東京オリンピックが開催されるため,野球とサッカーの試合が一気にできる会場(野球8試合と,サッカー8試合が同時にできる)が近場にできていたのです.もちろん,野球の決勝は東京ドームを予定していました.スポーツ大会が中止となり,結局,野球の優勝旗は現在も私の部屋にあり,3年間キープすることになります.

その他記念品の準備も抜かりなく,同門会用のおしゃれなネクタイ,学会参加者に向けた非常に品のあるコングレスバッグ,そして,金沢大学整形外科の業績をまとめた学会開催記念英文冊子を作成しました.いずれ皆様のお手元に届くかと思いますので楽しみにしていて下さい.外国人招待者には,加えて,JOA2021の特製けん玉をお送りしました.

6月10日から7月12日まで行われましたオンデマンド配信では,合計約12000人の参加者となり,単位付きの教育研修講演やシンポジウムの視聴回数は約23万回となりました.非常に大盛況で,参加していただきました学会員の皆様に深謝申し上げます.また,オンデマンド配信が始まった6月10日には,第94回日本整形外科学会学術総会開催記念の日本整形外科学会の広告が日本経済新聞の一面に掲載されました.理事長とのインタビュー形式ですが,ロコモを中心とした啓蒙的な内容で,私は,がんロコモやロコトレ,今回の学会の開催内容について述べさせてもらいました.

1926年(大正15年)に日本整形外科学会の創立と同時に第1回の本学術総会(当時は学会と呼称)が開催されてから,今年で94回目の学術総会となります.金沢大学整形外科学教室としましても,これまで,第45回(1972年(昭和47年))と第76回(2003年(平成15年)),そして,今回と担当させていただき,誠に光栄のことと存じます.充実した学術総会となりますよう,教室員と同門会が一丸となって準備に取り組んでまいりました.成功とは結果のみならず,その過程,プロセスにもあります.医局の先生たち,同門の先生方が一丸となれましたことが,大きな成功の一つと考えます.

今回の学会が,今後のハイブリッド形式の学術総会の基礎を作ったと言っていただければ,誠に喜ばしく思います.学会の開催にあたって,惜しみなく力強いサポートを頂きました同門の先生方に心より御礼申し上げますとともに,深く深く感謝申し上げます.

今後とも宜しくお願い申し上げます.

7月吉日
〈令和3年同門会誌 巻頭言より〉