学会記 33rd EMSOS in Graz, Austria/web (米澤 宏隆)

2021年12月27日

 腫瘍班の米澤宏隆です。2021年12月1日~12月3日にかけて行われました第33回 欧州骨軟部腫瘍学会 (EMSOS)に参加いたしましたので報告いたします。

 本来ならば、2020年5月にオーストリア・グラーツで開催予定でしたが、新型コロナウイルスの影響を受け2021年3月に延期、さらに12月に延期、…。極めつけは、直前 (11月22日から)のオーストリアのロックダウンにより、現地開催の中止が余儀なくされ、オンライン開催のみとなりました。学会事務局皆様のご苦労・心労がいかほどであったかお察しいたします。
 第33回と歴史を重ねる本学会は、骨軟部腫瘍だけの演題で、欧州を中心に全世界から演題が集まる熱い学会であります。金沢大学からは3演題を発表しました。前述の背景がありまして、すべてオンライン開催でした。8時間の時差があり、わたくしのセッションは22時から~23時で、ディスカッションが23時から30分間設けられておりました。座長は、2019年の国際患肢温存学会 (ISOLS)(アテネ)の会長をされたPanayiotis J Papagelopoulos先生、2019年の第22回 欧州骨軟部腫瘍学会 (フィレンツェ)の会長をされていたDomenico Andrea Campanacci先生であり、とても御高名な先生方でしたので身の引き締まる思いがいたしました。わたくしの発表は、がんの骨転移に関する画像診断についてでした。発表は事前に送付したビデオを供覧する形式ですが、ディスカッションは実際にwebで討論が行われました。わたくしはトップバッターであり、Papagelopoulos先生、Campanacci先生お二人ともからコメント、質問をいただきました。本学会参加者は、英語をセカンドランゲージとする方々ばかりでしたので、落ち着いてディベートができホッといたしました。

 

 


 同セッションのほかのプレゼンテーションではTomita scoreとTokuhashi scoreが比較される一幕がございました。”わたしはTomita scoreを使う”とpresenterが述べたとき、富田名誉教授の仕事の大きさに感銘を受け、金沢大学出身者であることに誇りを感じました。なお、Best oral presentation賞 (clinical research)に輝かれたのは、Memorial Sloan Kettering Cancer Center、E. Polfer先生の “Defining Depression and Anxiety in Orthopaedic Sarcoma Patient” でした。この研究は、18歳以上の肉腫治療患者において、初期治療中か、転移、再発などのステージによって不安 (anxiety)、うつ (depression)の有病率を評価した研究でした。3割以上の患者が不安やうつの状態であり、その多くが見逃されているとのことでした。化学療法や、担癌患者のフォローアップにおいて精神面のケアというのは非常に重要であり、とても興味深い内容でした。

 

 

 

 

 

 

 

他の受賞者は以下の通りです。

■Best oral presentation賞 (basic research)
S. Fischer
“Development of metastatic orthotopic xenografts from sarcoma patients as models for therapeutic decision making”

■Best poster賞
S. Freund
“Multidrug resistance Protein 1 silencing in osteosarcoma and chondrosarcoma cell lines”

 最後になりますが、このような機会をいただき、土屋教授をはじめ、同門の先生方に感謝申し上げます。今回の貴重な経験を糧に、今後の診療に生かしてまいりたいと思います。