金沢大学附属病院 整形外科

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骨再建・足の外科班

     
     
     
     
研究
 
Contribution of methylglyoxal to delayed healing of bone injury in diabetes
 (糖尿病ではメチルグリオキサール産生による糖化ストレスの亢進によって骨修復能が低下する)
   Molecular Medicine Reports 2017
 糖尿病では骨折のリスクが上昇し骨折治癒が遷延することが知られている。その機序の一つとして持続的な高血糖による糖化ストレスの亢進状態、つまり、後期糖化反応生成物(advanced glycation end-products, AGEs)の形成亢進と蓄積が考えられている。またAGEs形成の前駆体であるジカルボニル化合物methylglyoxal(MGO)はそれ自体の反応性も非常に高く骨折治癒に大きく影響を与えているのではないかと推測した。本研究では糖尿病における糖化ストレス、つまりMGO産生亢進が骨修復能に与える影響をin vitroとin vivoで検証した。In vivoでは、糖尿病マウスを作成し、大腿骨遠位部に径1㎜の骨欠損を作成し、CTで骨欠損部の修復過程を非糖尿病対照マウスと比較検討した。また血中・大腿骨中のAGEs値を液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)で測定し非糖尿病対照マウスと比較検討した。In vitroではマウス間葉系間質細胞(ST2細胞)の培地中にMGOを添加し、細胞増殖、LDHアッセイと骨分化効果判定を行った。糖尿病マウスは骨欠損部での骨形成は7,10日目において糖尿病群で有意に遅延していた(p <0.05)。血中と大腿骨中のAGEs値は、特にMGO由来のMG-H1 (methylglyoxal-hydro imidazolone) が上昇していた。細胞培養系での検証においては、培養ST2細胞の細胞増殖や骨細胞分化はMGO濃度依存的に低下した。本研究において、糖尿病マウスでは血中・大腿骨中のAGEsの上昇を認め、特にMGO由来のAGEが上昇するということを今回はじめて見出した。また、糖尿病状態ではMGOの直接作用により骨芽細胞の分化・増殖が抑制され、その結果、骨形成が遅れるものと推察した。したがって、今後はMGO解毒酵素の活性化やMGO消去薬の投与などにより骨修復能の改善が期待される
Uncultured autogenous adipose-derived regenerative cells promote bone formation during distraction osteogenesis in rats.
 (ラット脂肪由来再生細胞移植は延長仮骨の成熟を促進する
   Clinical Orthopaedics and Related Research 2014Clinical
 骨延長法は長期の治療期間を必要とするため、延長部骨形成を促進する手法の開発が期待されている。脂肪組織から容易に得られる細胞集団であるAdipose-derived regenerative cells(ADRCs)は、多分化能を有する脂肪由来幹細胞を多く含む幹細胞移植材として注目されている。 私たちはこの技術に着目し、ADRCsが骨延長部の骨成熟を促進すると仮説を立てた。本研究の目的は、骨延長部にADRCs移植を行い、骨延長部における骨成熟の促進について検討、評価を行うことである。ラットの大腿骨に創外固定器を設置し、8日後から1日0.8mmの速度で骨延長を8日間行った。延長終了時にラットの鼠径部から脂肪を採取し、加工して得たADRCsをコラーゲンゲルに包含して延長仮骨内に経皮的に注入した。生理食塩水注入モデルとコラーゲンゲル注入モデルを作成し比較した。ADRCs移植群の延長部平均骨塩量は、移植後3、4、6週で他群と比較し有意に高値であった。組織学的にはADRCs移植群で延長部骨梁形成が促進した。3点曲げ試験では、移植後4、6週でADRCs移植群で有意に高い最大点応力が得られた。 ADRC群の延長仮骨はBMP-2、VEGFA、SDF-1のmRNAの発現が有意に高値であった。蛍光標識したADRCは移植後2週で新生骨に生着しており、骨組織への分化が示唆された。ADRCs移植は延長仮骨の成熟を促進し、骨硬化の時間を短縮した。その機序としては、細胞の骨組織への分化が示唆され、またBMP-2やVEGFA等液性因子の増加が骨形成と血管新生を促進したと考える。ADRCsは骨髄由来間質細胞と比較し、細胞の採取が簡便かつ大量に可能である。移植に際し培養を必要とせず、感染や免疫反応の危険が低く安全性が高いため、早期の臨床応用が期待される。
 
Prevention of pin tract infection with titanium-copper alloys.
 (チタン銅合金の抗菌作用による創外固定ピンの感染予防
J Biomed Mater Res B Appl Biomater. 2009
 チタン銅合金インプラントの抗菌性および細胞毒性について検討した。
銅を含有する割合が1%(1%Cu)と5%(5%Cu)の2種類を使用した。In vitro抗菌作用の確認は日本工業規格を参考に行ない、病原体は黄色ブドウ球菌と大腸菌を使用し,金属に接種させた菌量の経時的変化で抗菌性を評価した。また線維芽細胞を用いて細胞毒性試験を行った。その結果、チタン銅合金は抗菌作用を有し、細胞毒性がないことが明らかとなった。またin vivoのウサギを用いた創外固定の実験で、チタン銅合金が最も炎症や感染が少ないことが証明できた。更には、骨伝導能も有していることが確認された。

 すなわち、チタン銅合金には抗菌作用があり,創外固定ピン感染の発症を減少させる可能性があり、新しい生体材料となりうることが示唆された。
     
 
Percutaneous non-viral delivery of hepatocyte growth factor to fracture gap promotes bone repair in rabbits
 (ウサギ骨折モデルに対する肝細胞増殖因子を用いた骨折の遺伝子治療)
Clinical Orthopaedics and Related Research 2008
 骨折は多くの場合固定により治癒にいたるが,長い治療期間とそれによる社会復帰の遅れが問題となっており,修復促進による治療期間の短縮が早期の社会復帰につながる有用な治療と考えられている。肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor: HGF)は当初肝細胞の増殖・再生を促進する増殖因子として発見され,様々な組織において再生促進作用をもつことが報告されているが,骨折に対する作用については報告されていない。本研究では骨折の再生・治癒促進を目的として,ヒトHGF(hHGF)遺伝子を導入・発現させることで骨折治癒を促進できるか検討を行った。日本白色家兎を用いて脛骨に3 mmの骨欠損を作製し骨折モデルとした。術後2週にhHGF遺伝子50 μg(HGF群)とcontrol vector 50 μg(コントロール群)をhemagglutinating virus of Japan-envelope (HVJ E) vectorに封入し骨折部に経皮的に投与した。hHGFの発現をRT-PCRならびに免疫染色で評価する一方,骨折の修復をレントゲン,pQCT,力学試験,病理組織解析によって評価した。術後3週に採収した骨折部組織でHGF群においてのみ,RT-PCRによりhHGF mRNAの発現が認められるとともに,免疫染色により複数のhHGF陽性細胞が確認された。また術後8週でもhHGF陽性細胞が認められ,その発現は3週後に比べると減弱しているものの,6週間以上の発現期間の継続が確認された。一方,周囲の筋組織ではhHGFの発現は認められなかった。したがってhHGF遺伝子は注入局所において細胞に取り込まれmRNAに転写されhHGF/nt白質の発現に至ったことが確認された。次に骨折の修復をレントゲン解析により調べた結果,術後4週以降,HGF群で骨折治癒が促進されていた。pQCTにおいてはHGF群で皮質化がすすんでおり,mineral content,mineralized callus areaはHGF群で有意に高かった。力学試験においてもHGF群で有意に強度が高かった。さらに組織学的検討ではコントロール群において皮質化,髄腔構造の形成が不十分であったのに対してHGF群はほぼ元の骨にリモデリングされていた。以上よりhHGF/HVJ-Eを投与することにより骨折治癒が促進されたことが確認された。HGFが骨形成を促進させ骨折治癒を早めることが初めて示唆された。今後,骨折治療を早める方法の一つとして,HGF遺伝子を用いた治療の可能性が期待される。
 
     
 
Bone transport with bone morphogenetic protein-loaded hydroxyapatite in rabbits
 (骨形成タンパク搭載人工骨による骨延長再生術)
The Journal of Bone and Joint Surgery 2007
 これまで巨大骨欠損に対する治療として骨延長のBone Transport(BT)が広く用いられてきた。この方法は感染に強く耐久性があり生理的な方法であるため,現時点では最も理想的な再建方法である。しかし全ての骨欠損の症例で適応とはならず,骨欠損があまりにも大きく移動骨片の作製が困難で創外固定器を設置することができないものは適応とならない。一方で,近年の再生医療の発展で骨欠損に対する自家骨再生には足場と細胞とタンパクが必要であると言われている。さらに骨膜組織などで血行が温存されている場合には骨形成は飛躍的に良くなる。BTについて考えると,骨欠損部に新生骨を再生する原動力である移動骨片には足場・細胞・タンパク・骨膜血行の全ての要素がそろっている。そこで骨延長でこれまで再建できなった非常に大きな骨欠損に対しても,足場としての人工骨に細胞やタンパクなどを付加し,人工骨を移動させることによって骨の再生が可能であると仮説をたてた。そこでウサギを使用したBTモデルでの移動骨片を処理し,BTに不可欠な要素は何かを調べ,この要素を人工骨に搭載付加することにより,BTの移動骨片として人工骨が使用可能かどうかを検討した。BTを成功させるために必要な要素は仮骨の足場としての人工骨と骨誘導能を有するタンパクであることが分かった。そこでrecombinant human bone morphogenetic protein-2を搭載付加したhydroxyapatiteを移動骨片として使用したところ,BTによる骨新生に成功した。これまでBTの移動骨片に関してはある程度の大きさが必要で,なによりも生きた骨でなければならないと考えられていた。今回の実験で骨伝導能を有するトランスポーターに骨誘導能を有するタンパクが付加している条件で骨延長が可能であった。骨延長では骨髄内の間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化し骨を新生する。本実験の骨形成タンパク搭載人工骨に細胞はないが近位でホストと接し,細胞はホストより供給され人工骨表面に仮骨を形成・直接合し,仮骨を牽引することが可能であったと考えた。この技術は臨床応用可能で将来的に巨大骨欠損を有する症例に適応可能になることが期待できる.
 
     
 
Effects of timing of low-intensity pulsed ultrasound on distraction osteogenesis
 (骨延長に対する低出力超音波パルス照射時期における骨形成促進効果)
Joumal of Olthopacdic Rcscalch 2004
仮骨の骨成熟を促進させるために,延長仮骨部に低出力超音波パルス照射を行い,効果的な照射時期を検討した。日本白色家兎の脛骨延長モデルを作成し,待機期間に照射を行ったWaiting群(W群),延長中に照射を行ったLengthening群(L群),延長終了後1週間照射を行ったMaturation群(M群),未照射のControl群(C群)の4群に分け検討した。その結果,レントゲン像・骨密度測定では,L群は延長終了後1週目から3週目まで他の群に比べて骨形成は促進されていた。組織像では超音波照射側に旺盛な軟骨形成を認めた。M群でもC群に比べて骨形成が促進していたが,W群とC群に骨形成の差は生じていなかった。骨塩定量測定(図1)・ねじり強度試験ではL群が他の群に比べて有意に高値を示した。3D-μCTではL群でのみ延長仮骨の連続性があり,骨梁は緻密なネットワークを形成していた(図2)。骨延長部に対して時期を変えて超音波照射を行うと,骨延長中に照射した群が最も骨形成が促進されていた。以上より超音波照射の影響を最も受けるのは骨切り直後に出現する未分化な細胞よりも,ある程度分化した細胞であると考えられた。また,軟骨細胞の形成が旺盛なことから,内軟骨骨化を介して骨形成が促進されると考えられた。延長仮骨の骨形成を促進させるためには,骨延長中の超音波照射が最も効果的である。
     
 
白色家兎歴骨の延長仮骨に対する塩基性線維芽細胞増殖因子の効果
 一MMD法による延長仮骨内骨塩量の評価一
金沢大学十全医学会雑誌 2002
骨延長法の治療成績を安定させるため,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が延長仮骨部に早く確実な骨形成を導くことできるのか検討した。家兎の脛骨にl mm/日と2 mm/日の速度で20 mmの骨延長法を行い,延長仮骨内の骨塩量の変化をMMD(modified mineral densitometry)法を用いて評価すると,延長速度を上げることによつて明らかに骨形成が傷害されることがわかった。さらに,骨形成が傷害される2 mm/日の延長速度において,延長終了時にbFGFを投与すると,400 μg/0.5 ml 群ではコントロール群に比べ3~6週において有意に骨塩量の増加を認めた。80 μg/0.5 ml群では全経過を通じて高値を示す傾向を認めた。骨形成は延長速度を上げることによって傷害されたが,bFGFの投与によって回復したと考えられ,bFGFは延長仮骨部の骨形成不全例に対する有望な治療薬になりうると考えた。
     
 
術前放射線照射が延長仮骨形成におよぼす影響について
金沢大学十全医学会雑誌 2002
放射線照射後の延長仮骨形成障害に関する検討を行った。日本白色家兎の下腿にX線15 Gyを一回照射し創外固定器を装着した。7日間の待機期間の後1日0.5 mmの速度で4週間,計14 mm延長した。単純レントゲン撮影,組織標本,微小血管造影を用いて検討した。延長中は延長部の仮骨はほとんど形成されず非常に疎な組織のみで構成されていた。成熟期になり仮骨は徐々に形成され始めるが,その形態は通常見られる規則正しい3層構造の膜性骨化ではなく,不規則な散在性の内軟骨性骨化であった。また微小血管造影では,対照群の血管分布が非常に密であったのに対し,照射群では非常に疎であった。局所の低酸素状態により膜性骨化ではなく内軟骨性骨化が生じること,低血管形成であったことから,放射線照射後早期の骨延長における仮骨形成障害は,骨前駆細胞の障害だけではなく血管新生障害による低酸素状態が関与していると考えた。
     
 
業績
 
英語論文(2010~)
2017年
Contribution of methylglyoxal to delayed healing of bone injury in diabetes
Aikawa T, Matsubara H, Ugaji S, Shirakawa J, Nagai R, Munesue S, Harashima A, Yamamoto Y, Tsuchiya H.
Mol Med Rep. 2017;16:403-409

2016年
Lengthening for functional acetabular dysplasia due to limb length discrepancy: A report of two cases
Yoshida Y, Matsubara H, Takata M, Aikawa T, Shimbashi S, Ugaji S, Tsuchiya T.
J LimbLengthen Reconst; 2016, 2;55-58
 
Complications related to fibula resection during tibial lengthening performed with the Taylor Spatial Frame
Yoshida Y, Matsubara H, Aikawa T, Ugaji S, Tsuchiya T.
J LimbLengthen Reconst ; 2016, 2;82-85
 
Plating following gradual realignment with the Taylor spatial frame for refractory congenital pseudarthrosis of the tibia: A novel technique
Nomura I, Watanabe K, Matsubara H, Shirai T, Tsuchiya H.
J LimbLengthen Reconst ; 2016, 2;108-112
 
Intra-articular osteoid osteoma of the calcaneus: a case report and review
Hamada T, Matsubara H, Kimura H, Aikawa T, Yoshida Y, Tsuchiya H.
Radiol Case Rep. 2016;11:212-6

2014年
Clinical Outcomes of Conversion Surgery from an External Fixator to an Iodine-Supported Titanium Alloy Plate
Hidenori Matsubara, Toshiharu Shirai, Koji Watanabe, Issei Nomura and Hiroyuki Tsuchiya
Research Article: J Microb Biochem Technol 2014, 6: 049-053

Tibiocalcaneal Fusion for Charcot Ankle with Severe Talar Body Loss: Case Report and a Review of the Surgical Literature.
Aikawa T, Watanabe K, Matsubara H, Nomura I, Tsuchiya H.
J Foot Ankle Surg. 2014 Aug 9

Uncultured Autogenous Adipose-derived Regenerative Cells Promote Bone Formation During Distraction Osteogenesis in Rats.
Nomura I, Watanabe K, Matsubara H, Hayashi K, Sugimoto N, Tsuchiya H.
Clin Orthop Relat Res. 2014 Apr 8

Correction of a severe poliomyelitic equinocavovarus foot using an adjustable external fixation frame.
Nomura I, Watanabe K, Matsubara H, Nishida H, Shirai T, Tsuchiya H.
J Foot Ankle Surg. 2014 Mar-Apr;53(2):235-8

Simultaneous arthrodiastasis and deformity correction for a patient with ankle osteoarthritis and lower limb deformity: a case report.
Ugaji S, Watanabe K, Matsubara H, Nomura I, Aikawa T, Tsuchiya H.
Foot Ankle Surg. 2014 Mar;20(1):74-8

2013年
Over 10-year follow-up of functional outcome in patients with bone tumors reconstructed using distraction osteogenesis.
Watanabe K, Tsuchiya H, Yamamoto N, Shirai T, Nishida H, Hayashi K, Takeuchi A, Matsubara H, Nomura I.
J Orthop Sci. 2013 Jan;18(1):101-9.

2012年
Watanabe K, Matsubara H, Nomura I, Tsuchiya H. Salvage surgery with a tumor prosthesis for femoral condylar nonunion at the very advanced age of 90 years: a case report. Formosan Journal of Musculoskeletal Disorders. Formosan Journal of Musculoskeletal Disorders.3: Issue 4, 132-6,2012

2011年
Lengthening of the normal tibia in a patient with hemihypertrophy caused by Klippel- Trenaunay-Weber syndrome: a case report.
Takata M, Watanabe K, Matsubara H, Takato K, Nomura I, Tsuchiya H.
J Orthop Surg (Hong Kong). 2011 Dec;19(3):359-63.

Shirai T, Shimizu T, Ohtani K, Zen Y, Takaya M, Tsuchiya H.
Antibacterial iodine-supported titanium implants.
Acta Biomater. 7:1928-33, 2011.