金沢大学附属病院 整形外科

金沢大学整形外科 教授 土屋弘行
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 金沢大学医学部整形外科学講座は1953年に開講し,今年は開講60周年になります.本来ですと,講座開講60周年記念祝賀会を開催すべきところですが,平成27年(2015年)に,当教室が主催する第124回中部日本整形外科災害外科学会に合わせて盛大な開講60年記念祝賀会をご来賓の方々と同門会員一同で開催したいと思っております.学会は平成27年4月10-11日の2日間で行います.祝賀会は前日の9日を予定しておりますので,その日はスケジュールをあけておいて頂けましたら幸甚と存じます.よろしくお願い申し上げます.また,その翌年の平成28年(2016年)には,日本創外固定・骨延長学会を主幹することが決定いたしました.こちらの方も,何卒ご支援賜りますようよろしくお願いいたします.

 さて,おかげさまを持ちまして教室の活動は勢いを増しております.教室員の頑張りを少し紹介させて頂きます.世界一の規模を誇る米国整形外科学会(AAOS)における発表演題数ですが,2011年は9演題,2012年は13演題(招待講演1題),2013年は18演題(招待講演1題)と,まるで米国の大学病院整形外科のような感じになってきました.教室員の英語論文の掲載は,2011年が19論文,2012年が27論文で,早く年間50論文を達成したいと思っております.医学博士取得者は2011年が5名,2012年が4名でした.JOA総会での発表演題数は,2011年が24題,2012年が27題,2013年が34題となりました.JOA骨軟部学術集会での発表演題数は,2011年が15題,2012年が19題で,JOA基礎学術集会での発表演題数は,2011年が9題,2012年が21題でした.日本学術振興会科学研究費(いわゆる科研費)と厚生労働省科研費の取得は,2011年が10件,2012年が16件でした.学会賞,学会奨励賞,財団助成金などの受賞は,2011年14件,2012年が29件でした.また,国際学会での総発表数は,2011年が60演題,2012年が70題でした.特許申請については,2011年が1件,2012年が3件,新たにありました.このように,教室員は日夜奮闘を重ね,医学の進歩と教室の名誉と誇り,そして教室の更なる発展のために継続して成果をあげております.同門の先生方に於かれましては,引き続き,ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.

 毎年12月末,教室の忘年会の折に「師走セミナー」というものを開催しています.教室の各グループが1年の成果を述べると共に,その年の各分野のトピックスをロテーターの先生方に紹介することにしています.私もその一部の時間を頂戴して,1年間の思いを述べ,若いドクターたちを鼓舞するようにしています.改めて,ここに紹介したいと思います.3 points ruleに従って,まずは以下の3つを胸に刻むように言いました.
1)Think different.
固定観念にとらわれるな.
2)Rather gamble on our vision than make "me too" product.For us, it's always the next dream.
よそと同じ事をするより自分たちのビジョンに賭けろ.
俺達に肝心なのは,いつも次の夢
また,人生はギャンブル.自分自身に投資し,自分の人生を賭けるからこそ,未来が素晴らしいものになり得る.居心地のいい場所に留まる生き方は楽だが退屈.退屈は人生最大の敵!大海に漕ぎだそう!
3)Picasso had a saying; good artists copy, great artists steal.
ピカソはこんなことを言い残した.「優れた芸術家は真似をし,偉大な芸術家は盗み続ける」
 一昨年は,Steve Jobsのスピーチを紹介しました.その中で,彼は,自分のこれまで経験したこと,出会ったことが将来結びついて,それが創造に繋がるとして,So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. (だから,皆さんも,何らかの点と点がやがて将来において必ず結ぶつくものと信じなくてはならないのです)と述べていました.何か成果を上げるために重要な要素は,情熱・信念・執念だと思います.それを端的に表した言葉が,「すぐやる,必ずやる,出来るまでやる」です.当教室では,これを徹底することにしています.教室員とローテーターの先生方は,乾坤一擲の大仕事にトライして欲しいと思います.

 数々の発明を生み出した発明王のトーマス・エジソンの言葉に,「人生における失敗者の多くは,諦めた時にどれだけ成功に近づいていたかに気づかなかった人たちである.」,「ほとんどすべての人間は,もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき,そこでやる気をなくしてしまう.勝負はそこからだというのに.」,「わたしは決して,失望などしない.どんな失敗も,新たな一歩となるからだ.」があります.そしてまた,成功できないのは成功するまでやらないからだと述べています.蓋し名言です.捲土重来を期すことが重要です.

 毎年4月,桜とともに新入医局員の皆さんがやってきます.桜が満開になるように医局も華やかな雰囲気に包まれます.非常にエネルギーに満ちた瞬間でもあります.金沢大学整形外科は,「明るく,楽しく,元気よく」をモットーにしています.新入生には,是非,それを実践していただきたいと思います.新入医局員歓迎会・観桜会の挨拶で,気合いが入りました.以下がその内容です.
 今年の4月初旬に,和歌山にある世界遺産の熊野古道を訪れました.古の光と風を浴び,かつて天皇,上皇,法皇が歩いた道を歩きながら,過去への思いを馳せました.本宮の鳥居をくぐり,社へ続く階段では(ここで祈願したことが叶うとのことでしたので),教室員の益々の研究成果,論文発表や受賞,助成金獲得を祈願しました.那智大社を訪れた時に,八咫烏(やたがらす、やたのからす)の説明を受け,日本の国の成り立ちを勉強しました.この八咫烏は,日本サッカー協会のシンボルマークでもあり,日本代表チームのユニホームにも刻まれています.八咫烏は,日本神話で,神武東征の際に,高皇産霊尊によって神武天皇の元に遣わされ,熊野国から大和国への道案内をしたとされる烏です.一般的に三本足のカラスとして知られ古くよりその姿絵が伝わっています.

 日本の歴史を調べる過程で,興味深いアンケート調査を目にしました.どちらかと言うと驚愕の結果を知ったということになります.国家観をテーマにした大学生を中心としたアンケート調査で,まず初めに「日本の建国はいつ誰によってなされたか?」という質問がありました.皆さん即座に回答できるでしょうか.これは,紀元前660年,神武天皇によると答えるべきです.旧暦の1月1日が現在の2月11日にあたり,現在,建国記念日と制定されています.正答率2%,半数以上は解答欄が空欄(わからないということ),一番多い回答は,卑弥呼や推古天皇(第33代天皇で,日本初の女帝)だったそうです.日本史の教科書は,多くが卑弥呼の邪馬台国から始まり,最初に登場する天皇が推古天皇であるためにやむを得ない事情もあります.5%の人が,ダグラス・マッカーサーと回答したのが非常な驚きで,冗談かと思うほどです.第二次世界大戦後,GHQの指導により,日本史の教科書から日本の成り立ちの部分が削除されたまま現在に至っているのをご存知でしょうか.著明な英国の歴史学者アーノルド・トインビーは,自分の国の神話,歴史を学ばなかった民族は,例外なく滅んでいると言っています.米国の学生は100%,米国建国の日は1776年7月4日,建国者(founding fathers)は,Washington, Jefferson, Henry, Hamilton, Monroe, Madisonと答えられるそうです.現在の中国でも100%の人が,毛沢東と回答します.
 わが祖国,日本は現存する世界最古の国であることを皆さんご存知でしょうか.今上天皇(明仁様)は,第125代天皇です.神武天皇以来,一つのdynastyが2673年間続いている国です.天皇の即位した年も,第26代継体天皇の507年から正確に辿れます.米国の歴史が浅いことは周知の事実ですし,英国や仏国では王朝の交代が頻繁に行われました.王朝の乱立した中国もしかりです.外国人にとってみれば,日本は,崇敬の念に値する他国に類を見ない素晴らしい,誇るべき歴史を有する国であるのは明らかです.

 歴史教育が操作されて杜撰となり,日本という祖国に対する誇りや愛国心も生まれにくい状況となっている現在です.「日本を取り戻す」,「日本人の誇りを取り戻す」と,捲土重来を期して立ち上がった安倍晋三首相は,戦後レジームからの脱却を目指して力を振り絞っています.今後の日本を見守って行きたいと思います.
 閑話休題,ここで何故,歴史の話をしたかといいますと,これは教室の歴史にも同様のことが言えるからです.歴史は人類の営みが継続的かつ永遠性を持っていることを教えてくれます.歴史を学ぶことは,常に過去から最高のものを受け継ぎ,それを基に未来の信条や価値観を作り上げる努力をすることになるからです.過去の価値観や信条は,往々にして時を超越し,どんな時代でも通用します.金沢大学医学部整形外科学講座は,いつ誰によって創立され,どのような道を歩んできたのか,先人達の築き上げてきた教室の歴史をぜひ学んでほしいと思います.まずは同門会誌を紐解いてください.それを知った上で教室に対して誇りを持ち,そして,若い医師たちの力で,教室がより一層の輝きを増していくことを期待しています.

 ここで,若き精鋭たちに人生の方程式を教えましょう.
人生・仕事の結果=考え方(方向性)×熱意×能力
 これは,京セラを設立し,最近ではJALに奇跡の再生をもたらした稲盛和夫氏の実践哲学です.人生や仕事の成果は,これら3つの要素の掛け算によって得られるものであり,決して足し算では無いということです.私も大いに納得しました.能力とは才能や知能で,多分に先天的な資質であり,熱意とは事を成そうとする情熱や努力する心で,自分の意思でコントロールできる後天的な要素です.どちらも,0点から100点までの点数がつけられます.掛け算なので能力があっても熱意に乏しければ,いい結果は出ないことになります.逆に,能力に乏しくても,熱意でカバーすることが可能です.最初の考え方が最も大事な要素で,この考え方次第で人生は決まってしまうといっても過言ではないと稲森氏は言っています.何故最も大事かというと,これにはマイナスポイントがあるからです.-100点から+100点まで幅が広く,考え方の方向が間違っていると,ネガティブな成果を招いてしまいます.この配分を念頭に置いて,活動すると良いでしょう.私自身は,熱意でカバーすることが多く,もう一つ運という要素も加わると思いますが,運を逃さずつかむということが必要でしょう.
 同門会の先生方に,金沢大学医学部整形外科学講座に対してより深い愛情とと大きな誇りを持っていただきたく,愚生を始めとする教室員は,更に日々努力してまいりたいと思います.どうぞ変わらぬご支援を何卒よろしくお願い申し上げます.
 最後に,一昨年に本を紹介させていただいたことが好評でしたので,是非,気持ちのリフレッシュににどうぞ.

『海賊とよばれた男』 百田尚樹:(実話!大和魂ここにあり,魂に火がつきます)
『影法師』 百田尚樹:(これ以上の友情はありえるか)
『生き方』 稲盛和夫:(大きな夢をかなえるために)
『命の使い方』 落合信彦:(人生へのスタンスが変わる)
『日本人はなぜ貧乏になったか?』 村上尚己:(日本経済の真実を知ろう)

2013年6月吉日
〈平成25年同門会誌 巻頭言より〉

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