金沢大学附属病院 整形外科

 昨年4月1日に教授就任の辞令をいただいてから、はやくも1年以上が経過いたしました。また、6月26日(土)には、金沢大学整形外科同門会の皆様により盛大な教授就任式を催していただき、心より深く感謝申し上げます。多くの先生方から祝福のお言葉をいただき大変恐縮いたしております。340名超の出席をいただき、誇るべき日本一の同門会であると心底実感し、同門会の強い団結力を再確認させていただいた次第です。

 兎に角、あっという間の1年でした。教室運営の基盤として、"明るく、楽しく、元気の出る教室"を目指すこととし、教室のモットーとして"医学への精進と貢献、病者への献身と奉仕"を掲げ、我武者羅に駆け抜けた日々でした。過去3代にわたる、高瀬教授、野村教授、富田教授が築き上げてきた屋台骨は強靭で、しっかりとした道ができており、私はその道を伸ばしてただ突っ走るのみというのが幸運です。

 どのような方向性で今後の基礎的あるいは臨床的研究を進めていくのかにつきましては、今年1月13日(木)に開催されました金沢大学新春セミナーにて「運動器医療‐新たなる挑戦」と題してお話させていただきました。アウトラインを述べさせていただきますと、全領域に関係するものとしましては、ヨードコーティングによる抗菌チタン製インプラントの開発(既に臨床試験中で、人工関節、脊椎インストルメンテーション、骨接合材料、創外固定などに応用中)、脂肪幹細胞移植による骨・軟骨再生、末梢神経・脊髄再生、筋肉・腱・靭帯再生を試みているところです。腫瘍グループでは、骨親和性のある新たなプラチナ抗癌薬、樹状細胞を併用した凍結免疫療法、肉腫幹細胞、蛍光タンパク遺伝子を用いた癌細胞イメージングなどの研究を遂行しています。脊椎グループでは、凍結免疫療法を併用した次世代TES、ヨードコーティングの応用、椎弓形成術などにおける新たな低侵襲手術の開発、脊椎疾患における歩行動態解析などを手掛けております。関節グループでは、ナビゲーション手術の確立、破骨細胞に関与するサイトカインのノックアウトマウスを用いた骨折治癒過程の解析、脂肪幹細胞を用いた骨壊死や変形性関節症の再生医療などを目指しております。足の外科・骨再建グループでは、骨形成促進を目指した研究や脚長差を有する人の3次元歩行解析などを行っています。スポーツ整形グループでは、ACLプロジェクト、MRIによる軟骨変性の解析、遅発性筋痛症の病態解明などを、手外科グループでは、末梢神経の再生や、プロスタグランディンによる神経修復に関する基礎的および臨床的研究を遂行しております。最後に、リハビリグループですが、損傷靭帯治癒過程の解明、廃用症候群の臨床分類・重症度分類の確立、新たな運動機能測定機器の開発を目指して研究を行っております。是非とも、今後の進歩に期待していただきたいと思います。

 大学の一つの使命として、研究を行って医学の発展に貢献することが挙げられます。質の高い研究を行うためには、どうしても最初の研究デザインが重要となります。誰もが、世間をあっと言わせるような研究をしたいと思うのですが、なかなかそうはいきません。しかしながら、まずは研究をスタートさせ、結果を見て修正していく手法が最も良いのではないかと考えています。様々な研究が一つの仮説を生み、仮説を実証する過程で、さらなる仮説が生まれ、新たな研究が始まるのです。若い先生方には、一度体験したら忘れられない研究の醍醐味に魅了され、果てない世界に挑む研究者を目指していっていただきたいと思います。第35代アメリカ合衆国大統領John Fitzgerald Kennedy(JFK)の尊敬する日本人に米沢藩を立て直した上杉鷹山がいます。彼の有名な言葉に、「成せば成る、成さねば成らぬ何事も、成らぬは人の成さぬなりけり」があります。とにかく、第一歩を踏み出して科学の世界に入り込み、いろいろなことに挑戦していったら、必ずや道は開けてくるのではないでしょうか。不可能に挑戦し、それが現実となる。歴史はいつも勇気ある人によって作られてきました。

 成功や繁栄への三つの秘訣があります。愛情、情熱そして継続です。例えて言えば、同じ掃除をするにも掃除機を使って掃除をする感覚ではなく、掃除機になりきって掃除をするのとでは、おのずと結果は違ってくるわけです。教室で研究をする大学院生は、同じ実験をするのにも、試験管になりきる、培養細胞になりきる、実験動物になりきる、といったような気概をもって是非研究を進めていっていただきたいと思います。JFKの弟の元アメリカ司法長官Robert Francis Kennedyの言葉です。"Future is not a gift、 it is your achievement." 是非、明るい未来を勝ち取っていただきたいと思います。

 さて、今、日本は東日本大震災にみまわれて未曽有の危機に直面しています。不測の事態が起きて危機に直面した時、リーダーに求められるのは"的確な判断力"と"素早い行動力"です。大胆な発想と周到な準備を行って危機を回避できればそれに越したことはありませんが、なかなかそういうわけにもいきません。このような危機において、最後によりどころとなるのは、日本人としての誇りと自信です。世界最長の王朝(皇統)を有する日本(2600年超)、世界最古の文明を有する日本(四大文明はたかだか4千年、日本では3万年前から最先端の石器を有し、1.7万年前にはすでに磨製石斧や土器があったそうです)、知れば知るほど素晴らしい国であることがわかります。最近、向学心で読んだ祖国日本を知るための有益な本があり、下記に紹介いたします。興味のある方は何かの折に、是非ご一読されたらいかがかと思います。
○「日本人の誇り」 藤原正彦著/文春新書:(日本人の誇りと自信を取り戻す本)
○「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」竹田恒泰著/PHP新書:(本当に素晴らしい日本を知るための本)
○「世界に勝てる日本発の科学技術」 志村幸雄著/PHPサイエンスワールド新書:(金沢大学講師の書かれた本で日本の技術力に感服する本)
○「永遠の0(ゼロ)」 百田尚樹著/講談社文庫:(感動で涙が止まらない本)
○「運とツキの法則」 林野宏著/致知出版社:(人生に活力を与えてくれる本)

 金沢大学整形外科の益々の発展に向けて邁進していく所存です。今後とも同門会の先生方におかれましては、変わらぬ教室へのご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2011年6月吉日
〈平成23年同門会誌 巻頭言より〉

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